BUYING AN MG

めに

  歴代の'MG'は、とても魅力的なスポーツカーです。しかし、現代の日本車のように、ノーメンテナンスという訳にはいかず、取り扱いや維持にはある程度の注意を必要とします。
 古い輸入車の中では乗りやすいとは言え、残念ながらどなたにでもお勧めできるというわけではありません。近年のモデルもまた然り・・・
 魅力を一言で伝えるのは難しいですが、中庸の美学とでも言いましょうか、価格、スタイリング、シャシーの性能、動力性能、ハンドリングがほどよくバランスしているモデルが多く存在します。これは、量産市販車であることが良い方向に寄与しているからでしょう。所謂バックヤードビルダー製のような脆さはありません。機構も単純ゆえにメンテナンス性もかなりよく、耐久性も十分に考慮した設計がされています(もちろん製造当時レベルの話)。戦前の一部のレーシング専用モデルを除き、突出した高性能という車はありませが、数々のレーシングイベントで輝かしい歴史を残しています。


界標準スポーツカー?

 'MG'は、20 世紀初めに、英国の一自動車ディラーから始まった、世界でおそらく一番メジャーなスポーツカー「ブランド」です。最初から量産車の部品を流用するなど、手頃な価格と手頃な性能で量産され、英国だけでなく北米を中心に世界的にヒットしました。 伝統だとか権威などと無縁なスポーツカーでしょう。アマチュア・スピリッツに溢れ、メーカーが車を提供し、MGCCのメンバーがレース活動をしていた時期もありました。
 一部には伝統だとか、そう言うことを言ってMG に乗っている御仁もいますが、それは'MG'本来の楽しみ方ではないと思います。
戦前型のMGには、21世紀の現在となっては、確かに持っているだけで価値があるモデルもいくつかありますが、戦後型のMG、特にMGA以降のモデルは、乗って走ってなんぼの車ではないでしょうか。戦前モデルは購買層がアッパーミドルから上、またはアッパークラスのセカンドカーなどであったと思われますが、戦後モデルはロウワー・ミドルクラスからミドル・ミドルクラス、アッパーミドルのセカンドカーと、ターゲットを広げました。

 戦前モデルは小気味よく高性能でしたが、それがヒットしたのは価格の割に、ということを忘れてはいけません。いくつかの車種において、多少のモディファイでサーキットに持っていって、そのクラスでは、かなりの戦闘力を持っていたというモデルも確かにありますが。また戦後のアメリカ人に大ヒットしたのも、「リーズナブル」で高性能で「小さくて」面白い!という点です。

 イギリスで製造こそされましたが、一番愛した(笑)のはアメリカ人でしょう。クラブも盛んです。
 WW2 後、進駐軍などによって日本にも多く持ち込まれて以来、古くから日本にもクラブが出来るなど、熱心なフアンがいます。また、世界各地に、MGOC / MGCC系のカークラブが点在しており、いまだに活動は盛んです。


ギリス経済とともに

 古くは、Morrisの一ディラーから始まったThe MG Car Companyが独立した法人だった時期もありますが、オーナーが同じナッフィールド卿(ウイリアム・モーリス氏)であるMorris社に吸収され、その後はMorris社と運命を共にしてきました。その後、Austinグループとの統合で、BMCグループの主要?一部門となりました。
 イギリス経済の斜陽とともに、
BMCの雲行きも怪しくなり、産業自動車で強かったLeylandグループと経営統合された、BLMCからBLの時代は、Triumph優遇のLeyland側重役達により「冷遇」されたのは有名?です。
 1970年代以降、日本製スポーツカーなどに押され、
MGBの80年10月製造分を持ってMGの対北米輸出は終わりました。
 近年は、
BLRoverの統合によりRoverグループとなりましたが、そのBMW買収、さらなる転売により、MG Roverグループの主要部門として期待されていましたが、業績不振で融資も受けられず、ハイエナ企業の中国SAIC(上海汽車)との提携話も流され、管財人の元で知的所有権や技術が分割売買され、解体されてしまいました。MGの行き先は中国企業である中国NAC(南京汽車)でした。そのNACも2007年末、中国SAICに吸収合併されました。

 現在は、NAC MG Co.Uk(その後MG Motor UKに改名)という英国法人が、英国ロングブリッジ工場(バーミンガム工場へ改名)でMG TFの後MG6/GTを生産を再開し、中国工場でその他のモデル(中国専売モデル)を製造しています。残念ながら正規代理店モデルとしての輸入はありません。(2012年時点)

 日本での販売は、日英自動車(その他独立系)、レイランドジャパンなど、いくつかの代理店/日本法人を経て、ローバージャパンというRoverの子会社から、
BMW ジャパン傘下へ、そして2003年5月、オートトレーデイング・ルフトジャパン社の出資で独立法人"MG Rover日本"の設立(ローバージャパンと違いあくまで日本独自資本の輸入代理店です。本国とは資本関係はありません)が発表され、2003年7月より輸入販売が再開されましたが、2005年本国本社の解体に伴い業務停止となりました。。
 2001年発売のNew Zシリーズサルーンのうち
MG ZTZT-T、2002年デビューの MG TF正規輸入がされていました。MG XpowerブランドのSV/SV-Rも輸入を発表、今後車種も増えるだろうとの予測の中の業務停止は残念な限り。それ以降、正規にMGブランドの車は輸入されていません。若干数サンプル輸入されたりはしているようですが、市場には出てこないと思われます。

 幸いなことに、歴代
MGの部品は殆どが現在でも入手可能であり、特に販売台数の多いMGB / Midget/MGAや、TD/TFあたり関してはアップデートされたパーツ類も豊富です。BMH社を中心に部品販売生産網が組織化され、計画的に部品の再生産を行っています。入手も日本国内に頼りになるインポーターが数社あり、またMOSS Europe/USAを初めThe MGOCの部品部門など、日本からのメールオーダー/WEBセキュアサーバーにより、手軽に部品を入手できます。Rover時代以降のモデルについても、個人での部品調達が可能になっています。


モデル概要

 MGには、結構数々の車種があり、ボディの形状で大別すると、スポーツ・サルーンとツアラー(オープン)、クーペそれぞれがあります。
 また、年代別に、戦前(WW2)のPre Warモデル、戦後のPost warモデル、1980年のMGB製造中止以前のモデル、RV8復活までのバッジエンジニアリングのモデル、RV8以降、MGFなど、と類別できるでしょう。

 Pre Warモデルは、いわゆるクラッシックカー然としたモデルです。たいへん価値のある車種も多々ありますし、維持にはかなりの努力を必要とするでしょう。構造上、日本の夏の渋滞の元ではきつい状況も少しあると思われます。レーシングモデルからコンバーティブル、サルーンもあります。MMMと呼ばれるシリーズは、英国を初めとして投機的な人気もある程で、愛好者も多く、日本でも愛好家が結構います。維持に関しては結構努力が必要です。

 大戦による中断を経て、Post warモデルは、Tシリーズ(TA-TF)が生産され、特にTC,TD,TFと近代化されて行きました。連合軍として英国本土に進駐していた米兵が興味を持ち、北米に多数輸出されました。このあたりのモデルは維持は比較的容易です。

 近代的ボディとなった美しい成功作MGAより近代のMGは始まりました。その後、MGB(GT,C,V8)、Midgetの両モデルにより世界的人気を博しました。この60年代以降のモデルはパーツの欠品がほぼ無い為、維持は容易であり、メカニズム的にも熟成しており運転も容易です。

 サルーンでは、グループ企業であるBMCの車種に若干のモディファイを加えた、MG Magnetta ZA/ZB,Magnette Mk3/4やMG1100/1300なども生産されました。
 1980年にMGBの製造が中止され、MGの主要生産ラインのあったアビンドン工場は閉鎖、ローバーグループとなった時期は、幾つかのMGB復活プロジェクトはあったものの頓挫、結局、ローバーのサルーンの兄弟車である、メトロ、モンテゴ、マエストロなどが生産されましたが、日本ではマイナーな存在です。

 1993年、MGBの部品をかなり流用、お得意の量販車のコンポーネンツを組み合わせ、ローバー製V8の3.9Lを搭載した'MG RV8'が2000台限定(うち17台は先行試作で当初は市販されず)で生産され、日本でも大きな注目を集めました。
 その後、量販モデルであるミッドシップオープンのMGFが発表され、さらに2001年、ローバーの75/45/25をベースとした、ZT,ZR,ZS及びZT-T(シューティングブレイク=ワゴン)が発表され、2003年MGFの大幅モデルチェンジ版”MG TF”が発表されました。実は、このRover〜MG Rover辺りのモデルの維持が結構大変です。日本でのディラー網が瓦解したため、部品購入なども少し努力が必要です。

レース部門のMG Xpowerブランドでは、スーパースポーツカテゴリのMG Xpower SV/SV-Rも発表されています。2004年には、ZTサルーンのV8搭載版、MG TFの発展型クーペ MG GT(コンセプト)が発表されましたが、実現に至らずMG Roverは業務停止、管理下におかれてしまいました。事実上この辺りのモデルは購入すら難しいでしょう。

MG Rover解体後、中国NACに買収された後のモデルは少数サンプル以外は日本に入っていません。


 MGFですが、国内で流通しているのは、2000年モデル以前になります。それ以降、本国では外観に若干の変更があったり、CVTが採用されたりしましたが、国内で流通しているのは、基本的に1.8iと1.8VVCの2種類のみです。その他、限定グレードでアビンドンというのもありましたがエンジンは1.8iと同じです。
 実用車として使われているケースが多いので、コンディションは様々です。市場価格はかなり安価ですが、維持費用はミアータより割高なのは間違いないので、多少の金銭的余裕が無いと維持はキツイかも知れません。また個体によっては雨漏り、ガスケット抜けなども報告されています。
 発展型である、
MG TFも相当数が輸入されました。MGFの欠点はある程度は解消され信頼性はかなり向上していますが、輸入代理店の瓦解の為、パーツ入手からしても覚悟が必要でしょう。逆にMG Roverが管財下に入り、英国でもディラー網が瓦解したためThe MGOCのパーツ部門を始めとするパーツショップでも、MG Roverがキャタピラーの子会社へ売却したパーツ流通網と併せて、部品入手が可能になっています。BMH社の販売網での部品再生産も始まって行くと思われます。

 RV8 はMGBベースの中量級ボディにV8 エンジンの組み合わせ、豪華なインテリア。日本には1000 台以上輸入されており、本国の相場よりかなり安価で入手できます。しかし、コンデションの悪い車が多くなってきたようで、購入には十分な注意が必要でしょう。維持コストもそれなりに必要です。近年は英国に逆輸出される車も増えています。また香港、豪州などにも再輸出されています。MGFと同じく、部品調達に少々の努力が必要です。

 MGAは、流麗なボディを持ったラダーフレーム構造ですが、十分現代的な一台です。MK2/1600であれば90HP仕様ですのでMGBを追いまわすことも可能です。当時ワークス活動もしていました。価格はさすがにある程度高価で200万円台から上となります。DOHCのTwincam仕様もありましたがエンジンのメンテナンスの問題があります。またROADSTERボディと併せてFixed Head Coupeもあります。パーツ供給はほぼ問題ありません。

 MGB / Midgetは、当時のディラー物に加え、80年代後半の好景気にかなりの数が輸入されました。1960年代より80年前後まで製造されており、型式的にはいくつかのバリエーションがあります。市場価格も20万円から350万円ほどまで様々です。人気の高い車種のせいもあり、コンディションも様々ですが、部品も豊富で維持はかなり楽です。英国では新しいボディを使った再生新車や、MGB V8などが作られています。パーツ類も非常に豊富です。日本国内でもほぼすべての部品が調達できます。

 MG1100/1300,ZA/ZB,Magnette mk3,4は、なにぶん古い車&(どっちかと言えば)マイナー系サルーンですので、状態は千差万別、値段もさまざまです。扱う業者も様々で、購入には十分慎重になる必要があると思います。それぞれ、BMC/BLMCの他のブランドに基本的に同一な姉妹車があり、ボディや光り物系など以外の基本的な部品は共通です。メッキパーツなど供給には一部難しいものもあります。MG1100/1300はADO16姉妹のVanden-Plus Princessが日本では人気でした。ZA/ZBは最近密かなブーム?です。上質な小型サルーンで趣味車としてはお勧めです。

 Pre Warモデル(左参考写真 MG M-Type)や、MG TF,TD,TC,TAなどなどは、日本では数が少なく、普段は目にすることも難しいです。信頼出来る業者を頼るなど、海外からの輸入も考える必要があるでしょう。パーツを個人輸入することを考えれば、思ったより維持は楽なようです。

 Metro,Montego,Maestroは、10年前でしたらまだ入手もなんとかなりましたが、今では日本正規輸入車絶滅宣言が出る日も近いでしょう。消耗品のタイヤサイズを初め、各パーツの供給など課題は多いです・・・あきらめた方が幸せでしょう。本国では未だにそれなりの人気はあるようですが・・

 最後にZR,ZS,ZTですが、正規に日本に入っていたのは、ZTとZT-Tのみですが、MGF同様、本国ではパーツ入手が楽になりつつはありますが、製造中止モデルであり、先細りになって行くと思われます。日本国内でも、旧ディラー網などでの部品調達も可能ですが、価格はかなり高いようです。

 いずれにしろ、1990年代モデル以前を選ぶにあたって、重視したいのがボディコンデションです。モノコックボディとなったMGB/Midgetは、サイドシルも重要な応力負担部分ですので、腐食があると痛いです。MG1100/1300もフロアパンやサイドシルを始め下回りは比較的腐食しやすいため「パテ盛り」などにご注意。エンジンのコンデションも重要ですが、ボディ廻りも十分留意してください。
 MG1100/1300はBMC MINIなどにも採用された流体サスペンションのハイドロラスティックが装備されており、部品供給は難しい為この点にも留意してください。


わりに

 ヒストリックカーだけでなく、中古車には「相場」という物が確かにありますが、不動産や美術品と違い、その個体商品の程度というのは千差万別です。この値段だからこの程度であろう、というのはあくまで目安にしかすぎません。

 また、維持していく上で、仮にもスポーツカーとして乗っていこうと考えるなら、ある程度の維持費は覚悟しないといけません。MGのパーツは確かに安価なことが多いですが、タダでは無いのです。残念ながら、安価な状態が悪い個体を購入し、結局十分に修理できないまま維持しきれずに手放す、壊れたらすぐ廃車、なども多く見聞きします。なんとかなるだろうと、十分な見通しを持たずに購入することは、はっきり言って避けて欲しいと思います。

 一般論として、国産車を中古で購入する時と同じ注意は最低限必要です。国産車を購入する時に、業者の会社、販売員なども評価すると思いますが、どうも、「初めて」MGなりこの手の車を買う人は怠りがちです。販売店が英国文化を語ったり、紅茶に詳しかったりしても、それは自動車の販売維持とはまた別の話。店の内外装が立派だからと言って、長い付き合いの出来る店とは限りませんし、その逆も然りです。車のコンディションも、もちろん大切ですが、しばらくは、買った業者を頼ってメンテナンスをすることになると思いますので。

 殆どの車が購入直後から多少なりの修理や調整が必要になりますので、良い業者から購入することが重要です。また購入にあたって契約書記載と保証、整備内容の詳細な確認も必要です。業界慣習で結構いい加減なこともあります。

 雑誌広告・記事をうのみにせず業者を選び(有料掲載の広告だけでなく、持ち込み企画記事、タイアップ記事など、広告ではない記事に載っても・・)、また、戦前モデルやコンペティションモデルなど、よほど貴重な車以外はあせって買わない方がよいと思います。ロータス等他のブランドと比べて流通は比較的豊富ですので、何台か必ず比較すべきです。

 また、最近はYAHOOオークションを始め個人売買も盛んになって来ました。ご自分でパーツの購入から修理まで手配できるのなら、とても良い買い物でしょうが、なにも知識がなく場当たり的に買うのはお勧めしません。きちんと責任を持って維持して行ける方のみにお勧めします。
 1974年以降の排ガス規制モデルでは、一度車検を切った車の再車検は、昨今難しい場合もありますので、車検については確認すべき重要なポイントだと思います。(車検期間が残っていたとしても、必要な部品が無い場合、車検更新が難しい場合もありますので、留意すべきです)


参考 ※MGのヒストリー (Wikipedia)